重賞競走
'94 弥生賞 G2
'96 七夕賞 G3
着順 | 日付 | レース名 | 競馬場 | 芝ダ | 距離 |
1 | 1994年03月06日 | 弥生賞 G2 | 中山 | 芝 | 2000 |
1 | 1996年07月06日 | 七夕賞 G3 | 中山 | 芝 | 2000 |
3 | 1994年01月09日 | 京成杯 G3 | 中山 | 芝 | 1600 |
1 | 1993年11月28日 | 赤松賞 500万下 | 東京 | 芝 | 1600 |
1 | 1994年02月05日 | ヒヤシンスS オープン | 東京 | 芝 | 1400 |
2 | 1996年04月13日 | 卯月S オープン | 中山 | 芝 | 1200 |
年 | 主催者 | レース回数 | 1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 賞金 |
1993年 | 中央 | 5 | 2 | 0 | 0 | 3 | 18,471,000 |
1994年 | 中央 | 5 | 2 | 0 | 1 | 2 | 83,100,000 |
1995年 | 中央 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
1996年 | 中央 | 4 | 1 | 1 | 0 | 2 | 50,893,000 |
合計 | 中央 | 15 | 5 | 1 | 1 | 8 | 152,464,000 |
2020年から「ディープインパクト記念」と銘打たれた弥生賞ですが、1980年代後半から1990年代前半にかけての弥生賞は「サクラ」の冠が打たれた馬たちが大いに活躍しました。舞台となるのは千葉県の中山競馬場。本格的な桜の季節には少々早いですが、競馬ファンは弥生賞で春を実感しました。
1987年はサクラスターオーが勝ち、翌88年はサクラチヨノオーが。
サクラ軍団3連覇の期待を担ったサクラホクトオーは不良馬場に泣かされましたが、92年にはサクラセカイオーが3着に追い込んでいるほか、86年にはサクラトモエオーが2番人気の支持を受けて出走しています。
弥生三月花吹雪。
新緑のターフの上を、鮮やかなピンクの勝負服の馬たちが活躍するシーンはニッポン競馬を象徴するようなワンシーンだったと思います。
今回は、1994年の弥生賞を逃げ切ったサクラエイコウオーを、同馬が余生を送る新和牧場に訪ねました。
生産、育成を兼ねる総合牧場ではありますが、サクラエイコウオーのほか、サクラメガワンダーやサクラプレジデントなど多くの活躍馬が引退名馬として余生を送っています。
サクラエイコウオーは、同期にはナリタブライアンがいる29歳です。
案内された放牧地ではサクラエイコウオーが凛とした雰囲気を醸し出しながら、ぽつんとたたずんでいました。年齢の割には若々しく、そして落ちていない背中に生命力の強さを感じさせます。
その現役時代は、狂気にも似たスケールの大きな走りでターフを沸かせてくれた馬です。
圧倒的人気を集めたデビュー戦では4コーナーで逸走して競走中止。
2戦目に勝ち上がり、挑んだ京成杯3歳Sは突然走ることを拒否するように失速。
赤松賞を勝って挑んだ朝日杯3歳Sでは前半の半マイルを45秒9で飛ばして場内を沸かせました。
後続を突き放した弥生賞ではゴール前で小島太騎手が手綱を短く持ち替えて馬をまっすぐ走らせることだけに集中していたシーンが印象的でした。
好走と凡走を繰り返しながら、皐月賞、そしてダービーでは3番人気の支持を受けたのは、この馬の潜在能力を高く評価したファン心理以外何ものでもないのです。
あれから26年。今度はまったく動いてくれません。
カメラマンは困り果てている様子ですが、それでも、かつてのサクラエイコウオーを知る取材者にとっては
「人間の思惑通りに動いてくれない。」
という変わらぬ姿に、どこか嬉しくなります。
「当日の天気や気温などにもよりますが、朝に放牧して昼過ぎくらいまで放牧しています。
29歳になりましたが、今でも気の強い馬で、ときには軽快な歩様を見せてくれます。
(曾祖母の)スワンズウッドグローブのファミリーは長寿ですから、きっと長生きしてくれると思います。
この年齢になっても馬房の中では一番威張っているボスです。」
と案内してくれたのは同牧場の宮内マネージャー。
聞けば、年齢とともに歯の治療が必要になったそうですが、それを断固として拒否。
治療をあきらめざるを得なかったと言います。
不思議なのは、そのあとから再び食欲が増してきたこと。
もしかしたら「(自分は)大丈夫だから、余計なことをするなよ。」
と、そう言いたかったのかもしれません。
「大きなケガを乗り越えて、5歳時には七夕賞も勝ってくれました。
現役時代を知らないような若い方も含め。
今でも牧場まで会いに来てくれるファンがいるのも、この馬が競馬場で頑張ったからこそ。
自分たちは、馬たちを大切にしたいし、それが競馬サークル全体への恩返しなのかなとも思います。」
競馬の主役は、頑張ってくれる馬。
言葉にはなりませんでしたが、サラブレッドに対する宮内さんの愛情が垣間見える一言でもありました。
「内臓面を含め、年齢を考えれば元気な馬だと思います。
いつまでも、この馬らしく元気でいてほしいと、そう願っています。」
とインタビューを締めくくってくれました。